2016.8.13
市民自治こがねい運営委員 陣内直行
■参議院議員選挙 自公など改憲政党3分の2/一人区で野党共闘、健闘
改憲4党(自・公・お維・こころ)が77議席を獲得、非改選議席の3分の2を超え、衆参で憲法改正の発議権を確保するという、戦後71年初めての事態となりました。しかし、一方で、32ある一人区すべてで野党4党の共闘が実現、そして、11選挙区で野党共闘が勝利したことに注目したいと思います。深刻な矛盾が深まる沖縄、福島では現職大臣を破っての勝利でした。勝利した小選挙区では、前回の野党4党の得票数の足し算より2割増、野党だけでなく市民が主体的にかかわったことが成果に結びつきました。
今後、自公政権は、発議権を確保したことで、改憲の発議、国民投票への流れを強めることになります。
小金井のデータを見てみます。
投票率は、3年前の参議院選挙と比べ、6ポイント近く上昇。2014年12月の衆議院選挙に比べても2ポイント近く上昇しました。比例区票で改憲4党と野党4党を比較してみますと、小金井市では、改憲4党 28,316票(得票率47.27%)、野党4党 26,537票(得票率44.36%)です。東京都の得票率は、改憲が54.84%、野党が39.97%です。小金井の健闘ぶりがうかがえます。この間の「こがねいピースアクション」の運動の成果でもあります。
市民自治こがねいの推薦候補の結果
比例区では、大河原まさこさん(民進党)と福島みずほさん(社民党)を推薦しました。
大河原まさこさんについては、漢人明子さんもよびかけ人になり、小金井において生活者ネットや有志で「勝手連」を結成、候補者を招き、集会を開催、市民自治こがねい名簿あてに公選はがきを送付しました。その結果、小金井での大河原票は1,325票、全国でトップの得票率でした。しかし、全国の票は71,398票で、当選ラインには届きませんでした。
福島みずほさんは、小金井での福島票は578票。全国では254,956票。社民党としての議席確保が心配されていましたが、社民党は1議席を確保し、福島さんが当選を果たしました。
東京選挙区では、「女性と人権」のグループが擁立した佐藤かおりさん(無所属)を推薦しました。4月末段階での出馬表明、知名度なしでの立候補はやはり厳しいものがありました。小金井では候補者を囲んでの集会、ポスターはり、市民自治こがねい名簿への公選はがき送付などを行い、941票(11位)を獲得、東京全体でトップの得票率でしたが、当選ラインには遠く及びませんでした。
■東京都知事選挙 小池圧勝、鳥越完敗
都知事選挙の結果は、小池 2,912,628(44.49%) 増田 1,793,453(27.40%) 鳥越 1,346,103(20.56%)でした。
小池百合子さんの圧勝でした。市民自治こがねいが推薦した鳥越俊太郎さんは残念ながら完敗でした。
野党4党の候補だった鳥越さんは直前の参議院選挙での4党の比例票2,483,450票の54.20%しか獲得できませんでした。逆に小池+増田は改憲4党の票より130万票上積みしています。
有権者の4割いるといわれる無党派層全体の動向は、朝日新聞の出口調査では、51%が小池さんに、鳥越さんは19%となっています。ここでも、小池さん圧勝です。
前回の都知事選では、宇都宮(982,594)+細川(956,063)で200万票弱、全体の40%を獲得していましたが、今回、鳥越さんは、その70%しか固められず、得票率は20%と半減しました。宇都宮+細川票は、非自公であり、「脱原発」であり、鳥越票となる可能性は極めて高かったのですが…
都知事選は、1,100万人を超える有権者が一人を選ぶという全国で最大規模の選挙です。
大政党でも組織による「地上戦」だけでは勝ち抜くことができません。「空中戦」の比重が最も高い選挙です。無党派層をいかに獲得していくのか、政党支持者の緩い層をいかに引きはがすのかが選挙の重要なキーとなります。「空中戦」においては「知名度」「キャラクター、イメージ(決断するリーダー、たくましさなど)」「物語性」が極めて重要な要素となります。
鳥越候補は、「知名度」は抜群でした。それでもジャーナリストとしてのキャラクターについては現役感に乏しく、年齢、ガンなどについての不安を払しょくできず、週刊誌による「女性問題」キャンペーンに対しても有効な戦術を立てられませんでした。
鳥越選挙には、メディア戦略、ネット戦略、リスク対応、街頭や現場視察でのパフォーマンスなども欠如していました。「物語性」をどう演出するのかを考える人が選対本部にはいなかったし、発想する人もいなかったのでしょう。
それに比べ、小池候補の場合は、候補者自らが演出し、選対本部に指示を出し、「地上戦」ができない分、すべてを「劇場化」のために作戦を練り上げ、計画していました。
「大改革」「挑戦するリーダー」を小池候補は、出馬表明の段階で有権者に強く印象づけました。閉塞感が漂い、現状についての不安や不満は強いリーダーを求め、(仮想)敵を作ることで、旧態依然たるものへの挑戦を演出し、「改革」の合唱に有権者を引き込んでいきました。そんな「物語」を作ることに小池候補は成功したのです。
両者のこの違いがダブルスコアでの敗北という結果となりました。
小池圧勝と鳥越完敗の構図を小金井的に見てみましょう。
3人の票は、
小池 25,106 (41.32%) 増田 16,200 (26.66%) 鳥越 15,090 (24.84%)
直前の参議院選挙での野党4党は26,537票、鳥越票はその56.86%です。1万票以上、そしてその多くが小池票になったと思われます。
もう少し数字を詳しく見てみますと、小金井の「地上戦」での健闘が見えてきます。 一つは得票率です。
小池票の比率は、東京都全体と比べ3%低く、増田票も2%近く低いものでした。一方、鳥越票は逆に4%高く、全都的にはトップレベルにランクされます。
鳥越票の比率が高かった背景には、今回の選挙だけのことではなく、長年積み上げてきた小金井市民の政治的力が働いていると思います。そしてこの間も小金井では「ピースアクション」、「こがねい市民連合」など市民が前に出て、野党、政治団体と連携し、相互の信頼関係を築いてきました。これが、鳥越さんの告示直前の出馬にもかかわらず、「鳥越支援サポーターズ㏌小金井」の即、発足、民進、共産、社民、生活者ネット、市民自治こがねいと「鳥越支援サポーターズ㏌小金井」による「6者会議」へとつながりました。そしてできるすべてのことを行い、選挙終盤には27日に突然決まった29日の武蔵小金井駅前での鳥越さんが登場しての街宣、1,500名が駅前を埋め、小金井らしさいっぱいの盛り上がりとなりました。
もう一つは、投票率です。全都は59.73%でしたが、小金井は62.21%、2.5ポイント高くなりました。票数に直すと2,000票を超え、市議選であれば、二人当選するだけの票です。小金井での鳥越支援の「地上戦」での活発な動き、有権者への働きかけが、寄与しているのではないでしょうか?
市民自治こがねいは、参議院選挙、都知事選と休む間もなく、動き続けました。小金井における市民による勝手連的動き、政党、政治団体との連携に加え、メンバーの活動の範囲は小金井だけにとどまりませんでした。片山かおる、坂井えつ子、漢人明子も参加し、最終的には登録者数が80名を超え、鳥越選挙の重要な一角を形成した「鳥越俊太郎を応援する自治体議員の会」、「勝手連」など市民の支援をサポートするための「鳥越俊太郎を応援する市民センター」への参加、鳥越選対三多摩事務所の運営にも携わりました。
結果は伴いませんでしたが、それらは、得難いつながりと信頼をもたらしてくれました。国のかたちや地域のあり方が大きく変わろうとしている今日、選挙という市民の意思表明の最大のチャンスにきちんと向き合い、臨んでいきたいと思います。